「輝く今日を見つめて」2014.11.18


「十五歳の少年から学んだこと」プチ紳士からの手紙より

どこのお店でも、挨拶を重視しています。「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」...。
お店だけじゃなく、挨拶は社会人の基本。会社の新入社員研修でも、まずは挨拶の励行から始まります。でも年月が経つと、できて当たり前?のはずの挨拶がだんだんおろそかになってきます。案外、ベテラン社員の方ができていなかったりすることも。

さて、友人の田中司朗さんから「ちょっといい話」を教えていただきました。
田中さんは、フードサービスを最も得意とするコンサルタントで、今までに全国200社、5000を超える店舗の指導をしてこられました。そのうちの一つ、「物語コーポレーション」が運営する焼肉店「一番かるび」の藤枝店(静岡県)で、河合沙奈美さんが店長を努めていたときのお話です。

ある日、一人の高校生I君がアルバイトの面接にやってきました。
すこぶる体格が良く、素直で元気いっぱい。働くのが初めてとのことでしたが、どんな質問にも、「大丈夫です。頑張ります」と答えるので採用することにしました。
河合さんは、まず最初に、お客様が食事を終えられた皿の下げ方について教えました。(この作業を業界用語でバッシングと言います)ところが、その最中にだんだんとお店が混雑して、I君の指導どころではなくなってしまいました。
「私はみんなを助けるから、バッシングお願いね。それから、お客様の顔をちゃんと見て、『いらっしゃいませ』『ありがとうございます』と一言お断りするんだよ」そう言い残して、河合さんはその場を離れました。
ところが、思わぬ繁盛ぶりで15分だけのつもりが、気が付くと一時間以上が経っていました。I君のことが気掛かりではありましたが、身動きがとれません。
そして、レジで会計の対応をしていたときのことです。四十代のご夫婦に、「あそこで片づけをしている男の子を呼んで!」と言われました。
ガーン!クレームか?「何か失礼がございましたでしょうか?責任者は私ですので承ります」慌てて答えましたが、「いいから呼んできて」と繰り返されるばかりです。
仕方なく、急いでI君のそばに行き、「あのお客様と話した?」と尋ねると、「はい」との返事。
「何か失礼があった?」「覚えてません」「お叱りを受けたら一緒に謝ろうね」「僕、何かしましたか?」「分からないけど、お客様が呼んでいるから、とにかく行こう」二人でお客様のところへ行くと、そのお客様はI君と顔を合わせるなりこうおっしゃったのでした。
「君、いいよ!すごく一生懸命だね。お客様をきちんと見て、誰よりも大きな声でハキハキを挨拶していたね。私は最近の若者がこんなに一生懸命仕事をするとは思っていなかったよ。とてもいい気分になった。これからも頑張れよ。辞めるなよ」そして、千円のチップをI君に渡したのでした。
これには店長の河合さんもびっくり。有難くて嬉しくなりました。と同時に、恥ずかしさも覚えたそうです。なぜなら、その時、ホールには店長やベテランのスタッフが7、8名もいたにもかかわらず、最もお客様の印象に残ったのは、入店わずか二日目のI君だったからです。
彼にできたのは、片づけと挨拶だけでした。なのに、そのひたむきさがお客様の心を動かしたのです。

河合さんは言います。
「誰にでもできることを、誰にも負けないくらい一生懸命やれば感動を生むということを、十五歳の少年から学びました。それ以来、私はどんなに小さいことでも絶対に手を抜かないと決めました。誰にでもできることを、誰よりも真剣に、ひたむきに。それが私の信条です。」

その後、「大阪梅田お好み焼き本舗」向山店(愛知県豊橋市)の女将(教育店長)になった河合さんは、スタッフの休憩室に直筆でこんな張り紙をしました。

仕事とは、特別のことをしなくちゃいけないわけではない。当たり前のことを、当たり前でないくらい熱心に取り組むことだということを改めて教えられる言葉です。